ご挨拶

秋が深まるにつれ 日常の穏やかさが戻りつつあるように感じる今日この頃です。

気候変動がもたらす世界規模での災害、社会の格差や矛盾から生じる分断…私たちが生きる上での根本的な課題が示される近年ですが、それだけに私たちオペラ団体に課せられた使命は、いっそう心を豊かにできる公演の実現に努めることと存じます。

このような時勢下、私が総監督を務めます日本オペラ協会にとって、とても嬉しい出来事がございました。本年2月に新宿文化センター大ホールで上演いたしました、2020年度日本オペラ協会公演《中村透追悼公演~『キジムナー時を翔ける』》(作・台本/作曲:中村透)が、この9月に「三菱UFJ信託音楽賞」を受賞いたしました。
 この度の受賞は日本オペラのこれからにとって大きな励みとなりますが、この素晴らしい作品を遺してくださった中村透先生、並びに指揮の星出豊氏、演出の粟國淳氏、熱演してくださった出演者の皆様、そして関係各位の皆様方のお蔭と、深く感謝いたしております。そして何よりも、この公演にお運びくださいました皆様方のお蔭によるものと、心より感謝申し上げます。

扨、来年2月に上演させていただきます予定の2021年度の公演は、この作品の台本作者・高木 達氏自らが初めて演出するオペラ《ミスター・シンデレラ》です。
ジェンダーを絡ませウィットとユーモアにあふれる、「真の愛と幸せ」を問う日本オペラの傑作ですが、原作者でもある高木 達氏がこの作品の神髄をどのようにみせてくれるか…そこがこの度の公演のいちばんの見どころです。

また、桁外れに楽しいコンサートが年内にございますので、ぜひともご案内させていただきます。12月11日(土)午後2時開演、川口総合文化センター・リリア主催の《日本語ならばナンデモアリア》です。日本オペラ協会所属の歌唱力抜群の歌手たちによる、笑いと涙と感動に溢れるコンサートです。
私が構成と司会を務め歌も歌わせていただきますが、今が旬の美しき若手オペラ歌手たち、実績抜群の合わせて150歳となるベテラン歌手二人?…、そして霊媒師…実はオペラ歌手である江原啓之さんを迎えて織り成す、ジャンルを超えた日本語だけの楽しいコンサートです。
 師走の土曜の午後に川口リリア・音楽ホールで開催されますが、この二年間に亘るモヤモヤをどうぞこのコンサートでお祓いくださいませ。お待ち申し上げております。

なお、朝晩に冷気が感じられます折りから、どうぞくれぐれもご自愛くださいませ。

2021年 秋 吉日
郡 愛子