ご挨拶

猛暑つづきの毎日ですが、愛らしく咲く朝顔や向日葵に心が癒されます。

しばらくホームページの更新を怠っておりました間、新型コロナウィルスは変異を繰り返して収束の兆しが見えず、世界のあちらこちらで起こっている武力衝突や悲惨な戦争はますますエスカレートし、また、世界中で異常気象による自然災害が多発するなど…暗いニュースばかりに日常が覆われていたように存じます。

ともに多様さを受け入れて協調し合い、SDGsの目標に向かってより良い国際社会を築いて行こうという世界各国間の国連における合意目標は、いつの間にか影が薄くなりつつあります。

その後、皆様方にはご健勝にお過ごしでいらっしゃいますでしょうか…。

このような時こそ心身の健康状態をリセットするために、私たちの心奥に流れる日本の抒情歌、そして日本独自のオペラによって心を潤わせていただきたいと存じます。

私たち日本オペラ協会では、第70回まで回を重ねてきた『日本歌曲連続演奏会』を、日本歌曲とともに日本オペラのアリアや重唱の名曲を次代に継いで行くために、今年度の第71回より『日本オペラ・日本歌曲連続演奏会』へと名称を改めることといたしました。これに伴い、日本の多様な文化を発信する国際文化都市・池袋の中核エリアに位置する豊島区シビックセンターを会場とし、去る7月7日に当該の第71回『日本オペラ・日本歌曲連続演奏会』を開催させていただきました。出演者全員をオーディションで選出して格段のレベルアップを目指したことにより、お陰様で各方面より高い評価をいただくことができました。8月中には、これまでの主要な日本オペラの名アリアを初めて集大成した、《日本のオペラアリア選集》が音楽之友社より出版される予定となっており、これがこれからの日本オペラの飛躍的な発展を促進するきっかけとなりますことを願っております。

また、日本オペラ協会では、来たる11月25日・26日に同会場において、竹内一樹作曲、宇吹 萌台本による『咲く~もう一度生まれ変わるために』を上演いたします。

同作品は、文化庁委託事業令和2年度 次代の文化を創造する新進芸術家育成事業「日本のオペラ作品をつくる~オペラ創作人材育成事業」で選出された作品です。

「日本オペラ協会公演 室内オペラシリーズ №2」として上演されますが、次代の室内オペラのモデルとも期待される一作ですので、ぜひともご鑑賞いただきたく存じます。

さて、今年度の日本オペラ協会の本公演ですが、これまで満を持しておりました三木稔作曲《日本語版グランドオペラ『源氏物語』》の世界初演が、ついにBunkamuraオーチャードホールで2023年2月18日・19日の両日、実現できる運びとなりました。

皆様よくご存じの紫式部が西暦1000年頃に書き始めた世界最古の長編小説を基としたオペラですが、それから1000年後にあたるミレニアム2000年にセントルイス・オペラ劇場創立25周年記念事業の中心的な企画として、三木稔氏が同劇場より委嘱された作品です。

台本は、構想当初から世界、そして日本での公演を前提に、英語と日本語の同時進行で書かれておりましたが、これまで日本においてグランドオペラでの日本語版が上演されることは、そのスケールの大きさ故にございませんでした。

54帖にも及ぶこの長大な作品と多数の登場人物が織り成す複雑なストーリーを、いかにして3時間ほどの長さの感動的なドラマにまとめ上げたのか…もう、ご覧いただくしかありません。また、このオペラにおける登場人物はその場面ごとに全員が主役ですが、きっと適材適所に配されたキャスティングの妙をお楽しみいただけることと存じます。日本オペラ協会のオールスターが織り成すこの歴史的な公演に、ぜひともお運びくださいませ。心よりお待ち申し上げております。

まだまだ暑い日が続くと存じますが、どうぞご自愛専一にお過ごしください。

2022年 夏 吉日
郡 愛子